住宅ローン変動金利が上昇か?!日銀の利上げが住宅ローンに与える影響を解説します。
はじめに
最近、日本銀行が政策金利の引き上げを検討しているというニュースが話題になっています。もし政策金利が上がると、住宅ローンの変動金利にも影響が出る可能性が高いです。本記事では、政策金利の引き上げが住宅ローンの変動金利にどのように影響するのか、そして変動金利型ローンを利用している方が今後どのような影響を受けるのかについて詳しく解説します。また、すでにローンを組まれている方が今から取れる対応策や、住宅取得時に利用できる特例や税制優遇についても触れていますので、ぜひ参考にしてください。
1. 政策金利が0.1%から0.25%に上昇した場合、なぜ住宅ローンの変動金利も連動して上がるのか?
まずは政策金利が上がると、なぜ住宅ローンの変動金利も連動して上がるのか、その理由を見ていきましょう。
1.1 政策金利と住宅ローン変動金利の関係
政策金利は、日本銀行が金融機関に貸し出す際の基準金利であり、経済全体の金利水準を左右する重要な指標です。日本では、政策金利として「無担保コール翌日物金利」が用いられています。この金利が上がると、市場全体の金利も上昇し、それに伴い銀行の資金調達コストが増加します。
銀行はこの資金調達コストを反映させるために、貸出金利、つまり住宅ローンの変動金利も引き上げることになります。変動金利型の住宅ローンは、短期プライムレート(銀行が優良企業に短期貸し出しを行う際の基準金利)に連動しており、短期プライムレートは政策金利の動向を受けて変動します。したがって、政策金利が0.1%から0.25%に上がると、それに伴って住宅ローンの変動金利も上昇するのです。
2. 住宅ローン変動金利の「5年ルール」と「125%ルール」との関係
変動金利型の住宅ローンには、借り手を守るための「5年ルール」と「125%ルール」が設定されています。これらのルールが、金利上昇時にどのように影響するのかを見てみましょう。
2.1 5年ルール
「5年ルール」とは、変動金利型の住宅ローンでは、金利は半年ごとに見直されるものの、毎月の返済額は5年間固定される仕組みです。このため、金利が上昇しても、すぐに毎月の支払い額が変わるわけではなく、5年間は変わらないのが特徴です。
しかし、金利が上昇すると、返済額のうち利息部分が増加し、元本返済の割合が減少します。その結果、5年後に返済額の見直しが行われる際に、新しい金利水準に応じた返済額が設定されるため、支払い額が大幅に増えるリスクがあります。
2.2 125%ルール
「125%ルール」は、5年後に返済額が見直される際、直前の返済額の125%までに増加が抑えられるルールです。例えば、直前の月々の返済額が10万円であれば、5年後の見直し時に最大で12.5万円までしか上昇しないということです。
このルールは急激な返済額の増加を防ぐためのものですが、注意点もあります。返済額が制限されるために、利息の支払いが優先され、元本の返済が進まなくなる、または元本が増えてしまう可能性があるのです。これにより、ローンの返済期間が延びたり、総返済額が増加するリスクがあります。
3. 今すでに変動金利で借りている場合、月々の支払いがどう変わるのか?
変動金利で既に借りている場合、政策金利の引き上げは今後の返済額にどのように影響するのでしょうか?以下に、借入金額ごとの返済額の変化を表にまとめました。
【借入金額ごとの返済額の変化表】
借入金額(万円) | 金利0.5%の場合の月々返済額 | 金利0.75%の場合の月々返済額 | 返済額の増加(月々) | 返済額の増加(年間) |
---|---|---|---|---|
2,000万円 | 約51,000円 | 約55,000円 | 約4,000円 | 約48,000円 |
3,000万円 | 約77,000円 | 約83,000円 | 約6,000円 | 約72,000円 |
4,000万円 | 約103,000円 | 約111,000円 | 約8,000円 | 約96,000円 |
5,000万円 | 約128,000円 | 約138,000円 | 約10,000円 | 約120,000円 |
6,000万円 | 約154,000円 | 約166,000円 | 約12,000円 | 約144,000円 |
7,000万円 | 約180,000円 | 約194,000円 | 約14,000円 | 約168,000円 |
8,000万円 | 約205,000円 | 約221,000円 | 約16,000円 | 約192,000円 |
この表からわかるように、金利が0.25%上昇しただけでも、借入金額が多いほど月々の返済額の増加幅が大きくなります。特に、高額な借り入れをしている場合は、年間で十数万円の負担増加となるため、家計への影響が無視できないレベルになります。
4. すでにローンを組まれている方が今から取れる対応策
金利上昇が予想される中で、すでに住宅ローンを組んでいる方が取れる対応策をいくつか紹介します。
4.1 固定金利型への借り換え
変動金利のリスクを避けるために、固定金利型の住宅ローンへの借り換えを検討することが有効です。固定金利型は返済額が一定で、将来の金利上昇リスクを回避できるため、長期的な返済計画が立てやすくなります。
- メリット: 将来的な金利上昇リスクを完全に回避でき、家計管理がしやすくなります。
- デメリット: 現在の金利が固定されるため、変動金利よりも初期の返済額が高くなる場合があります。
4.2 繰り上げ返済で元本を減らす
金利上昇前に、余裕資金がある場合は繰り上げ返済を行い、元本を減らしておくことで、将来の利息負担を軽減できます。特に、金利が上がると利息負担が増えるため、早めの繰り上げ返済が効果的です。
- メリット: 返済期間を短縮し、総返済額の軽減が期待できます。
- デメリット: 繰り上げ返済手数料が発生する場合があるため、事前に確認が必要です。
4.3 毎月の家計見直しと返済計画の再確認
金利上昇に備えて、家計の支出を見直し、無駄な支出を削減することも重要です。また、返済計画を再確認し、将来の返済負担に対応できるかをシミュレーションしておきましょう。
- メリット: 家計の無駄を省くことで、返済に充てられる資金を増やせます。
- デメリット: 家計管理に手間がかかるため、継続的な見直しが必要です。
5. これから住宅を取得される方向け、住宅取得に使える特例や税制優遇
(2024年9月現在)
金利上昇時には、少しでも家計の負担を軽減するため、これから住宅を取得される方が利用できる特例や税制優遇を活用することが重要です。以下は、2024年9月現在で利用できる主な特例や優遇制度です。
5.1 住宅ローン減税
住宅ローン減税(住宅借入金等特別控除)は、住宅ローンを利用して家を購入した際、一定期間にわたり所得税や住民税が控除される制度です。年末の住宅ローン残高の1%が10年間(条件によっては13年間)控除されるため、住宅購入者にとって非常に大きな節税効果があります。
- 適用条件:
- 住宅を新築・購入、または中古住宅を購入し、自ら居住すること。
- ローンの返済期間が10年以上であること。
- 床面積が50㎡以上であること(所得制限がある場合、40㎡以上でも適用)。
- 合計所得金額が2,000万円以下であること(住宅の種類によって異なる場合があります)。
- 控除額:
- 新築住宅の場合、最大で年間40万円(長期優良住宅等の場合は50万円)まで控除されます。
- 13年間適用される場合、後半3年間は年末ローン残高の0.7%が控除されます。
5.2 すまい給付金
すまい給付金は、消費税増税による負担を軽減するため、住宅を取得した際に一定の給付金が支給される制度です。主に年収が一定以下の世帯を対象としており、年収の制限がありますが、多くの世帯で利用できるメリットがあります。
- 給付額:
- 最大50万円(消費税率10%時)までの給付金が受け取れます。
- 給付額は収入に応じて変動し、世帯主の年収や住宅の種類によって異なります。
- 対象者:
- 収入が一定基準以下の世帯(年収775万円程度以下)。
- 住宅の取得に際してローンを利用している場合や、現金での取得でも条件を満たせば適用可能です。
5.3 贈与税の非課税枠拡大(住宅取得資金の贈与特例)
親や祖父母から住宅取得資金を援助してもらう際、一定額までが非課税となる特例があります。贈与税の非課税枠が拡大されているため、親族からの支援を受けやすくなり、実質的な負担を軽減することができます。
- 非課税枠:
- 新築や一定の条件を満たす住宅の場合、最大で1,000万円までが非課税となります(省エネ住宅などの場合)。
- 一般住宅の場合は最大で500万円が非課税です。
- 適用条件:
- 20歳以上の受贈者が、直系尊属(親や祖父母)からの贈与を受けること。
- 受贈者の年間所得が2,000万円以下であること。
- 取得する住宅が一定の基準を満たしていること(面積要件など)。
5.4 次世代住宅ポイント制度
次世代住宅ポイント制度は、環境性能やバリアフリー対応が充実した住宅の新築・リフォームに対してポイントが付与され、そのポイントをさまざまな商品と交換できる制度です。
- ポイント付与:
- 省エネ性能の高い住宅やバリアフリーリフォームなど、一定の条件を満たす住宅に対してポイントが付与されます。
- 取得ポイントは家電や家具などの購入に使えるため、生活費の軽減に役立ちます。
まとめ
政策金利の引き上げは、住宅ローンの変動金利にも連動して影響を与え、月々の返済額が増加するリスクがあります。特に、変動金利型ローンを利用している方は、長期的な影響を見据えた対応が求められます。すでにローンを組んでいる方は、固定金利への借り換えや繰り上げ返済を検討し、家計の見直しを行うことで、金利上昇に備えることが重要です。また、これから住宅を取得される方は、住宅ローン減税やすまい給付金、贈与税の非課税特例などの制度を賢く活用して、少しでも家計の負担を減らすことが大切です。最新の制度を常にチェックし、最適な選択肢を見つけていきましょう。
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